1-16-2003(Thu.)

エビータ

 期待しないで見た映画ほど、印象に残ったりする。この映画も、そんな作品でした。監督はアラン・パーカー、主演はマドンナとくれば、巷も大騒ぎなロードショウでしたが、レビューであまり誉めている人がいなかったのも、マドンナならではな気がします。

 私がこの映画を見ようと思ったのは、ふらりと立ち寄ったビデオ屋さんで「ジョナサン・プライス」の名前を目に留めたからでした。といっても、お名前でピンと来るでしょか。「Brazil(未来世紀ブラジル)」で主役のサム・ラウリーを演じてた人です。その1〜2年後には「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」なんてふざけた映画にも出演してたそうで、わたくし的には引っ掛かる要素の多い人なんですが、「未来世紀ブラジル」で見せたちょっと線の細くてマザコン気味な青白い坊やが、エビータではペロン大統領になってしまっているのが、どう化けているのか見てみたかったんです。

 結果は出番的にも、マドンナとアントニオ・バンデラスのアクの強さに押されてしまって、この人独自のインテリっぽい品の良さはあまり全面には出てこない映画でしたが、「未来世紀ブラジル」の頃の青二才風の面影もすっかり取れて、堂々たる紳士に見えたのは良かったです。1つだけ難点を挙げるとすれば、こ〜ゆ〜押さえた品のあるタイプの人は、マドンナ=エビータみたいな野心家で女の武器総動員の女性には惹かれないでしょー、ってとこでしょか。どうもエビータを見初める動機がピンと来ないんですよ。「優しく見守る名声のあるダンナ」って意味ではひじょーに良いのですが、理性的すぎてマドンナに一目ぼれするタイプには、とても見えん。



 対称的に、期待しないで見たマドンナはかなり良かったです。セリフは殆ど歌なので、心配された演技のクササは全く気にならず、こんなに歌えた人なのねと素直に感心しましたです。わたくしマドンナといえば、「上海バンスキング」でしたっけ。ショーン・ペンと共演した映画ですけど、ありを見るともなく見ていたTVでズルズル最後まで見てしまったときは、「この人は一生映画に出ないほうがいい」とさえ思ったものですが、この映画では毒々しい妙な色気もすっかり涸れてて、案外いいんですよ。

 お歌ではアントニオ・バンデラスに食われまくって、目も当てられないだろうなぁと思ったら、これがまた。さすがにアラン・パーカー監督に「この役は私以外に誰がいる」とゴーインに押しまくっただけあって、お歌のほうもしたたかに成り上がっていくお話も、まさにピッタリはまってる感じがいたします。サントラも日本公開前に売れまくって連日J-WAVEでも流れていたので、ビデオを見る前からメロディが耳にこびり付いていたものですが、劇中でも「Don't Cry for Me Argentina」の差し替えで、同じメロディが何度も使われておりました。こりが、アントニオ・バンデラスとの掛け合いで歌うと、けっこういいのよ。

 ただマーチング・バージョンと称する、アップテンポの「Don't Cry for Me Argentina」だけはちと頂けない。ありわ内容を考えたら、スローバラードでないとおかしいです。エビータが瀕死の床ではかなげに歌うオリジナルの「Don't Cry for Me Argentina」は、スター@マドンナ一世一大の見せ場だったのではないでしょか。あの場面だけだったら、かつてのスキャンダラスなセクシー・アイドル路線の毒は、キレイさっぱり忘れて見たほうがいいです。きっと演じながら、決して恵まれていたとは言えないご自分の生い立ちとエビータ本人を重ね合わせて、大統領夫人@エヴァ・ペロンとゆーより、しっかりスター@マドンナの自伝に出演していた気になっていたに違いない。



 サクッと見ると時代背景が我々日本人にはサッパリ分からないんだけど、セリフでやったら説明クサくて聞いてられないような内容を、「歌う語りべ」としてアントニオ・バンデラスが「Don't Cry for Me Argentina」の調べにのせて、場面場面に合わせた抑揚で歌うのがひじょーに上手い。元々「ランバダにーさん」という認識だったので、歌って踊れるのは分かっていたけど、あのマドンナに食われないアクの強さといったら、こちらもハマリ役だったでしょう。演じている人が気持ち良く役に入り込んで、それがお手盛りクサくもなく、見ているほうも「あぁピッタリだぁ」とすんなり受け入れられる、各人の濃厚な個性が絶妙なバランスで成り立っている映画でありました。

これがいわゆる、監督の腕ってやつなんでしょね。

 わたくしアラン・パーカー監督といえば、「フェーム」でも「ミッドナイト・エクスプレス」でもなく、「エンジェル・ハート」だったんですよ。あの映画はお話自体がトリッキーで怪しげで面白かったんだけど、音楽ものだったらピンク・フロイドの「ザ・ウォール」でしょか。あれだけ輝かしい受賞歴のある人なのに、よりによってなんで箸にも棒にもの2大作品なのだ?とは自分でも思います。知らずにしっかりロードショウで見ていた作品では、「Birdy」なんて大メジャー作品もあったりしますけど、あまりにも路線が多岐に渡っていて、自分の中で結び付いてなかったんです。

 それも長いことCM業界にいたとあっては、大納得。「エビータ」もそうでしたけど、画面の見せ方と音楽とのからませ方が、とっても上手いのですね。歯切れよくサクサク進むストーリーと、一瞬でインパクトの強い映像と音楽を組み合わせた画面作りは、まさにCM製作そのものって感じです。全体が小気味好く繋がってはいるんだけど、どの場面を抜いてもちゃんとプロモーションに使えそうなカット割りは、連続30秒CMの集大成みたいな印象ですね。この人の得意な路線というのが映画のストーリーからだけでは見えてこなかったのも、1人で納得した気になっております。

 とまぁド素人のわたくしが聞いたような解説をしなくても、専門の紹介はいくらでもあるでしょうから、監督のプロフィールや好きな食べ物なんかはそっちにお願いするとして、お話をエビータに戻しましょう。



 果てしてエビータという人は薄幸だったのかとゆーと、一歩間違えるとイメルダになってしまいそうな状況で、「時を上手く味方に付けた人」とでも言いましょうか。映画を通じて見たものは典型的なシンデレラ・ストーリーで、しかも後世まで美しく語り継がれる必須条件「美人薄命」を最大限に活用できた人、そんな印象でございます。歴史的な意味合いや、今のアルゼンチン国民からどう思われているか?というあたりは、外国人による外国人の映画なのでかなりギャップはありそうですが、少なくともミュージカル映画として見る分には、とってもよく出来た作品だと思います。ミュージカルとゆ〜ものにさほど魅力を感じてなかったわたくしが、そう思ったくらいですから。


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