10-10-2002(Thu.)

東京ジョー

撮影現場では、よく妙なギョーカイ用語が飛び交う。

「右から2番目、ヤオヤでハントケにしてくれる?」
「メダカでいくから、そこのバッテラわらっといて」

なんでこ〜ゆ〜しゃべり方をしなくてはいかんのだろ。

 接客業の符牒ならまだ分かる。お客さんがいる前で「トイレ行ってきます」という会話はしないでしょう。でも映像業界の符牒は、必然性が全く分からないのです。長年聞いていれば意味は分かるけど、被写体に聞かれて困るよーな指示ではないのよね。だいいちブツ撮りのときでも使うんだから、接客業の符牒とは根本的に性格が違うものなのでした。んでわ、なぜ?ってことになると、私は「トケイ」「ハントケ」以外で、使う必要のある単語はほとんど思い付かないなぁ。

 こりわ中型以上のカメラのように、ファインダー上で被写体が天地逆さに映るものでは「右」「左」で指示を出すと左右反対になってしまったり、アシスタントがカメラと向き合っている場合「向かって右」なのか「自分の右」なのか混乱するから、意味はひじょーによく分かる。英語でも「clock wise(C.W.)」「counter clock wise(C.C.W.)」という表現を使うので、こりが映像業界に関わらず万国共通の合理的な表現とされているのは納得するのですよ。んがっ。「ヤオヤ」ってなんだぁ。「わらう」ってなんだぁ。そ〜ゆ〜言い方をしなくてはいけない理由を言ってみろぉ。

 こじつけっぽい由来を聞いてしまうと、「ははぁ、そですか」としか言い様がないのだが、通じにくい言葉を使っておいて「通じない」と言われても困るのよね。「新人くんに『そこわらって』と言ったらニッコリされちゃってねぇ」な〜んておやぢギャグでは、もはや飲み屋のおねーたまでも笑ってくれまへん。またこ〜ゆ〜単語を好んで使う人物があまり好きになれないからかもしれないけど、なぜか符牒には「自分達だけエライ」みたいなトーンが感じられて、意地でも使いたくなくなったりする。



 そんな「わたくし軽佻浮薄です」と自らを貶めるかのごときギョーカイ用語に偏見バリバリのわたくしも、先日ふと由来を聞いて「ほぉ」と思ったものがあるのです。そりわ「せっしゅう」というお言葉。カメラマンさんが「せっしゅう」な〜んてのたまうと、アシスタントの小僧に撮影機材を片付けろと言ってるか、スタジオかロケ現場を押さえておけと言ってるようですが、こりわ「ウマをはかせる」ちうこと。モノは試しにフラビオ師匠に聞いてみたら、このお言葉にはちゃんと由来があるそうだ。

 早川雪舟(雪州とも書くらしい)さんという方をご存じでしょか。泣きながら足でネズミの絵を描いてしまったお坊さまでわないのです。お名前はそこから取ったのかもしれませんが、ハリウッドで活躍された日本人俳優だそう。映画「戦場に架ける橋」では、捕虜収容所の所長役の人です。わたくし「戦場に架ける橋」は見たのに、ど〜ゆ〜お顔かもあまり憶えてません。時々あまりのハマりっぷりに役者のネームバリューより、役柄でしか覚えられない人物がいたりするのですが、早川雪舟さんもそのうちのお1人です。かなり印象的な役柄なのにそうとは気付かずに見ていたシリーズでは、ゲイリー・オールドマンさんとジョニー・デップさんに続く快挙でした。



 で、その雪舟さん、演技は良いのにいかんせん背が低かったそうな。なので寄りのシーンで他の役者さんと向き合うときに、背の高さを調整する専用のお立ち台が使われたのだそう。それが現場では「雪舟台」と呼ばれていたので、人やモノにウマをはかせるときに「せっしゅう」と言うようになったと。ま、語源とゆーのはもっともらしい由来が後付けで出現したりするので、真偽のほどは定かではないですが、そのお話を聞いて早川雪舟とゆー人にちと興味をもって調べてみたのです。

 そしたらなんとこの方、1949年に「東京ジョー」というハリウッド映画で、ハンフリー・ボガードさんと共演なさっているのですね。ROXY MUSIC時代のブライアン・フェリーが、相変わらず半音外したちりめんビブラートで歌ってた「TOKYO JOE」という曲は、この映画からタイトルだけ拝借したのだそう。あれま、知らなかった。銀座でロケが出来たなんて、いい時代だにゃぁ。お歌のほうはリリースから20年後に、キムタク主演のドラマの主題歌になって話題になりましたが、映画はお歌のリリースから遡ることさらに28年。じつに48年掛けての、壮大なヒットソングになったのですね。

 他に雪舟さんが出演された映画では、「新しき土/ドイツ版」てのもスゴイ。ベースは舞姫みたいな感じだけど、日本てこう見られてたワケねってのが、なんとなく汲み取れるあらすじだったりする。どちらも外国から見た「ズレた日本」を垣間見ることが出来そうで、見てみたくなった映画でした。


【参考資料】
http://www.minipara.com/movies/joe/index.shtml
「東京ジョー」のあらすじ。

http://www.tdx.co.jp/movie/mpage/html/022/L18.asp
 困ったことに、ビデオも買えちゃったりするのだな。ううむ、1回見たら気が済みそうだからレンタル・ビデオで良いのだが、レンタルにはなさそうだしなぁ。誰か買わない?<おい

http://www.toyama-cmt.ac.jp/~kanagawa/cinema/gaikokueiga.html
 こりわまたちと違った切り口で、映画の中の「ズレた日本」を分析しているページ。自分も含めて昭和も後半に生まれた日本人は、外国映画で中国人だか日本人だか分からない「ズレた日本人」が登場しても、「いねーよ、こんなヤツ」でカラカラ笑って終わりかと思っていたけど、改めてこう分析されると複雑ですねぃ。

 してみると、決して日本人を好意的に描いていない「戦場に架ける橋」を喜んで見ているのもヘンと言えばヘンだし、「クワイ河マーチ(ボギー大佐)」を小学校のブラスバンドで演奏しちゃうのも、随分妙な習慣のような気もする。「音楽にはマーチとゆージャンルもあるのだよん」て教えるだけなら他の曲でもいいような気がするけど、やっぱ教科書に「軍艦マーチ」ぢゃマズかったんだろね。

 音楽の教科書と言えば、ポップスやロックと題されたページに「イエスタデイ」や「レット・イット・ビー」が出てくるのもどうかと思ったけど、たとえ麻薬所持で捕まってもビートルズは「いい子ちゃんバンド」とゆーイメージが定着しているのも、スゴイことだと思う。ぢゃ、なんだったらい〜のよ?ってことになると、ロック界に子供の模範になるような人物って思い付かないんだけどね。


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倶楽部冗談

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