11-14-2001(Wed.)

先走り企画と市場の需要

 11月の半ばと言えば、ワイン好きな方なら「第3木曜日」は忘れないことでしょう。さよう、ボジョレー・ヌーボーの解禁日というやつである。

 さしてワインに詳しくない私でも、「そろそろそんな時期なのね」くらいの印象はある。もっともフランスもののフルボディを舌の上で転がしちゃったり、口の中で膨らませちゃったりする「ワイン通」と称するみなさまは、ライトボディなヌーボーはお好みでない方も多いので、どちらかというと「本気のワインが飲める日」というよりは、季節の区切りとして認識している感が強い。なんとなく、海外有名どころのバレエ団の来日公演が増えてきて、「くるみ割り人形」だの「ボレロ」だのの宣伝が目に入りだすと、「あぁ、年末が近いのね」という気分になる。そしてこの「年末気分」になるきっかけの1つに、ボジョレー・ヌーボーの解禁日も含まれる。

 そもそもこれを書こうと思って調べたから、「ボジョレー・ヌーボーの解禁日は毎年11月の第3木曜日」などと書いているが、いつもはニュースで成田の中継を見たからとか、酒屋さんの店頭で気付く程度のものである。この時期になると、夏を迎えるラーメン屋さんが「冷やし中華はじめました」なんて貼り出すあれと同じく、「ボジョレー入りました」とか「限定○○本、先行予約受付中」なんて貼り紙が、酒屋さんの入口に誇らしげに出たりするものね。



 さて今年はどこで気付いたかというと、なんと近所のスーパーである。お酒を売ってるのは知ってたけど、扱ってるとは思わなかったので、ボトルを見たときもすぐには気付かなかった。売り場も隅っこのほうへ押しやられて、とても「ボジョレーだものね」という扱いではない。近付いてみて、それが「Beaujolais Nouveau」と書かれていることに間違いないと確認したものの、解禁直後のヌーボーにありがちな、にぎにぎしい宣伝POPや販促おね〜さんもいない。「あれ、もう出てるんだっけ?」とボトルを手にして、ようやくナゾが解けた。99年ものと、2000年ものなんである。つまり置いてあるのは、セール用のワゴンなのでした。どうりで、ツナ缶やらみりんやらと一緒にいると思ったら・・・。

 こりも出荷されたときはヌーボーだったのでしょうけど、「ヌーボー」を名乗るにはちと年期が入り過ぎて、古米の袋に「とれたて新米!」なんてステッカーが貼ってあるのと同じくらいの哀愁を感じてしまったじょ。しかもボトルネックには「特別限定」と書かれた、もちろん去年のプレミアムである花柄のランチョンマットと、これまた期限切れの「応募ハガキ」が着いているのが何とも言えず。あたかも、いっときもてはやされたアイドルの写真集を、大量に古本屋で見つけたときのような物悲しさを醸し出しておりました。

 ココのスーパーは目の前のイトーヨーカドーに対向すべく、2年くらい前に大幅に改装してパッと見は紀ノ国屋ちっくな趣になったのだが、我が家のご近所は、お米は「魚沼産コシヒカリ」や「無農薬・精米券付き○○さんちのお米」なんてブランドものより、思いっきり「標準価格米」とゆーブレンド米から売り切れる地区である。とーぜんお酒も銘柄を指定して買おうと思ったら、ココで探そうというほうが間違っている。ビールは独自に提携したオランダからの直輸入と称する、ケース買いしても¥2,000ちょいの日本の法律では「ビール」と呼んではいけないものが最も売れているし、悲しいボジョレーと同じワゴンには、ココでじっくり熟成されたレミー・マルタンや、モエ・シャンドンも数本残っている有様である。

 あぁ、それなのに、それなのに。今年もまた入れるのですねぇ。これを書いているのは14日の夜なので、あと数時間で解禁ということになるのだが、「先行予約受付中」は無事に規定数を終了したのだろうか。かくしてココのスーパーのアルコール部門は、庶民がどっぷり生活感を溢れさせながら暮らしている街のニーズに革命を起こすべく、把手付きの巨大焼酎「大五郎」や我が家で日本酒の「まる」に混じって、「記念日でなくてもお花を」とか「いつもの食卓がキャンドルとワインでビストロに早変わり」なんてライフスタイルを目指して、しばらく先走りしそうな気配なのでした。



 先走りと言えば、「感動の21世紀を」という超バブリーな企画たちはどうだったんだろ。数年前から今年の元旦向けに「QE2でゴーカ世界一周」とか、「コンコルドで世界一周しながら新世紀の変わり目を何度も経験」とか、アラブの石油王とユダヤの財閥と日本人をターゲットにしたとしか思えない、「お1人さま800万円から」なんてナメた旅行のお誘いがバンバン出ていたものですが、その後その「感動の21世紀」を迎えた人のレポートはお目に掛かったことがなく。ゴーカな新世紀ツアーは予約の出足こそ上々だったようですが、その後リストラの嵐が吹き荒れて退職金が目減りしてしまったとか、うっかり先行予約しちゃった日本人から大量にキャンセルが出て、売り切れたハズのチケットが「残席あります」なんて、いきなり半額近い値下がりを見せたとこまでは覚えているのだが。

 市場のニーズを先読みしなくてはいけないということでは、多少なりとも関わりのある仕事をしているので、イメージ先行で理想が先走りしてしまうのはどこか身につまされる思いがして、どちらも笑い飛ばす気にはなれないのだけどね。


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とうがらし@倶楽部冗談






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