7-4-2002(Thu.)

色の名前

 色の話題でこの頃よく聞くのが、「亜麻色ってどんな色?」というお話。亜麻とは繊維や油を取るために栽培されている植物なので、厳密に「これ」とは言いにくいけど、そ〜ゆ〜カラーチップもあるくらいだから、いちお色の名前として認識されています。具体的にどんな色かとゆーと、亜麻仁油紙(あまにゆし)みたいな色をご想像頂ければ、良いのではないかと思います。あの火傷なんかに使う、包帯やガーゼがデベデベっつかないようにする、オイルペーパーってゆーんでしょか。いわゆる亜麻紙(あまがみ)ってやつです。

 物の色はご存じのように、透過光と反射光でも微妙に異なるので、説明しにくいんですよね。webで見ているのはRGBの透過光線だし、印刷物で見ているのはCMYKの反射光線だから、インクでは存在する色なのに、画面では絶対出せない色とゆーのもあるんです。初めてこれをディスプレイ上で見たときは、突如その昔習った「マンセル色環」なんぞが頭をよぎり、「くしょ〜、理論どーりにグレーになりおって」な〜んて思ったりもしたものです。

 かようにカラーチップで見せる「亜麻色」は、「亜麻色の髪の色」とは少々違う気もしますが、うちの母親なんぞは「茶髪とはどう違うの?」とゆー身もフタもない突っ込みまでしとります。対して「茶髪は根元が黒いけど、亜麻色の髪は全体にキレイに亜麻色なのれす」とゆー詭弁で言い返したわたくし。「黄土色と琥珀色の中間くらいの感じ?」というのも間違いではないですが、「黄土色」といったら反射光で見る不透明色だし、「琥珀色」というのは透過光で見る透明色なので、軽やかな髪の色を現すなら「亜麻仁油紙の色」が一番近いのではないかと、自分が聞かれた場合はそう説明しています。



 色の名前と言えば、最近の発見は「透明」とゆったら、巷では「無色透明」のことなのれすね。色味(彩度)を聞いたつもりが、「スモーク」とか「透明」という濃さ(透度)を現すお言葉が返ってきて大混乱しましたが、確かに市販の缶スプレーには「透明」とか「スモーク」と書いてありました。ありゃ。「色とゆーのは彩度と明度によって現され、透過光線の場合はそこに透度も加わる」な〜んて思っていた頭には新鮮な出来事でした。これってじつわ、お客さんと話をするときもかなり大変。仕事では極力業界用語を避けて、一般的な言葉で通したいと思っているので、余計な気を回して「透明ですね」と無色透明を想像していたら、お客さんは「で、カラーチップはまだですか?」なんて透明樹脂の色出しを待っていたりするんです。

 流行のキャンディ・カラーシリーズも透明色の一種ですが、あれって地金がうっすら透けて見えるってだけで、昔からあった「透明レッド」とか「透明オレンジ」なんて色なんですよね。したがって樹脂の加工なら、透明樹脂にメタリック顔料で調色しないといけないのですが、樹脂も布と同じように「先染め・後染め」といって、素材で色出し出来ない場合は成形済みの型に塗料を乗せることになるんです。そこで「キャンディ・レッド」という発注をされてしまうと、インク屋さんは透明レッドを用意するだけなので、思った色に仕上がらない。仕方ないので、シルバーを吹いてから透明塗料を上塗りするとか、後行程でずいぶんお金の掛かる仕上げになったりします。

 こんなふうに色の名前で右往左往してしまうのは、語彙が豊かな詩人の世界だけではないのです。最近は電化製品や車の色にも、そのメーカーでしか通じない色が沢山登場して、聞いただけでは分からない色も多くなりました。アボガド・グリーンやボンダイ・ブルーなんて色も一世を風靡したものですが、ブームが過ぎてしまうとただ古くさい色に感じてしまうのも、哀愁を感じてしまいます。色の流行りに法則があるのは学生時代に既に理論として習ったので、さほど新しい発見ではないと思いますが、物に対する愛着は色も重要な要素だと思うんです。それが色そのものが飽きられたというより、名前で飽きられたりするのが、古典的な色彩理論とは違う最近の傾向なのかもしれません。

 私は一過性の難しいカタカナの名前より、「亜麻色」とか「浅葱色」なんて言うほうが情緒があって好きなので、このところやけに脚光を浴びている色彩研究所のみなさまにも、ぜひ色の名前には普遍的で情緒豊かなネーミングをお願いしたいものです。・・・なんつってな。じつわ数年前まで「浅葱色」って「浅黄色」だと思ってたり、好きな色は?と聞かれたら「白」だけど、うるさいことを言ってしまうと「白」は色彩ではないので、エラそうなことは言えないんですけどね。


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倶楽部冗談

とうがらし@倶楽部冗談






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