1-6-2003(Mon.)

羊をめぐる冒険

 3年前の「2001年宇宙の旅」に続いて、話題になるだろうなぁと思ったら、やっぱり年明けに話題になった小説。

 これを読んだのって、もう10数年前になってしまうんだなぁ。村上春樹さんの本て自分では積極的に買わなかったけど、勤め人時代に同室の先輩にあたる人が、長距離通勤のお供に「読みやすいよ」と貸してくれたのがきっかけで、その後ポツポツ初期の代表作は読んでいる。これも全部買ったものではなくて、何かの拍子に人様から頂いたものばかりで、上手いことダブらずに揃っているのです。最初に借りたのが「カンガルー日和」という本で、タイトルがカワイらしいのでもっとカワイイ話かと思ったら、ちょっと違ってた。

 その頃はサリンジャーなんて知らなかったから、「なんだろう、この日常の積み重ねみたいな取り留めのない文章は?」くらいの印象だったと思う。この人の小説とサリンジャーの決定的に違うところは、フツーの人はあまり注目しない動物が出てくるところと、やたらに同棲中の彼女が出てくるところでしょか。出てくる動物は「カイツブリ」だったり、「カンガルー」だったり、「綿羊」だったり、なんでそこに注目したのか聞きたくなってしまうものばかりだけど、中でも羊はお気に入りらしく、別の話のプロットとしても「羊男さん」なんてのが出てくる。

 全体的に話の流れはゆっくりで、読みやすい文体なのにナンセンスで固められていて、70年代安保が吹き荒れた頃にノンポリやってた、そこそこいい大学の文科系の人って、こんな感じなんだろうなぁという印象がとても強い。ご自分がその当時興味があったのは、そこそこ「イカした女の子」とどうしたら長い時間一緒にいられるかと、「ナンセンス〜」という流行語だったのではあるまいか?なんて思ってしまう。後年サリンジャーの作品を読んで、軽いタッチの情景描写で登場人物の心情を描こうとする手法は、「なんだぁ、ベースになるものがあったのね」と少々騙された気分になったものだけど、「羊をめぐる冒険」だけは読み直してもいいかなと思う。

 じつはこの人の作品てどれもスルスル読んだわりには、結末を憶えていなものも多くて、比較的長い作品の部類なのに、この「羊をめぐる冒険」もラストをしかと憶えていないのです。サリンジャーおよび、サリンジャーに強く影響されたであろう人のお話って、元々結末らしい結末がないのだけど、この手の日常描写が得意な人のわりにはかなり絵空言が飛躍していて、どうオチを着けたんだったか急に気になりだした作品でもあるのです。

 本には何度読んでも面白いものと、1度で気が済むものとありますが、自分の中ではわりと「スルスル読めたけど、読み返すかどうか分からない本」だったのが、新聞の話題でまた読んでみる気になったから、「本はやたらに捨てるな」って本当だなと思ってしまった出来事でした。


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とうがらし@倶楽部冗談






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