11-4-2001(Sun.)

がいし

 「碍子」と書いて、「がいし」と読む。

 知ってました? 私は初めて知りました・・・と言い放ったら、母親に「あんた、ついこの前もそう言ってたわよ」と呆れられた。こんなん、ごく一部の電気系につおい人しか知らんと思うじょ。それを即答できちゃううちの母親も何モンだ?と思うけど、我が家ったらそ〜ゆ〜うちなのである。マキシムのクッキーやフォーションの紅茶を頂いても、なんの有難みもなく番茶のようにすすってしまうくせに、なまじっか電気の知識があるものだから、こ〜ゆ〜話題にはきわめてうるさい。しかもそんな世間知らずの自分が知っているものは、フツーの女子も知っている「一般常識」だと思い込んでる節がある。あのね。

 さてその「碍子」なのだが、広辞苑を引くと「電線を絶縁し支持するために、鉄塔や電柱に取り付ける装置。一般に磁器またはプラスチック製の絶縁体と、鋳鉄製の金具より成る」とある。この説明で、一発で分かる人っているのかなぁ。形を描いてもらったらすぐに理解したのだが、「あ〜、あのソロバンの珠みたいなヤツね」「???」「おソバ屋さんの出前カブに着いてるようなやつでしょ?」「ありわ絶縁体ぢゃありません」「形は似てるぢゃん」という押し問答がしばし続く。

 かように我が家は母親が物理屋さんなので、幼少の頃からロマンのかけらもなく育ってしまったように思う。たとえば幼稚園児くらいの子供放し飼いと、子供放し飼い姉が電柱の上部に乗ってる物体を見て、「ありわきっと、電線工事に来た人が一々下まで降りなくてもいいように、上にもゴミ箱がついてるんだよ」なんて会話をしていると、即座に「ありわトランスと言って変圧器なのです」とゆー夢もちぼーもない正解が飛んでくる。夏休みに「わ〜い。シュークリームみたいな雲が、空いっぱいに並んでいるじょぉ」なんてはしゃいでいると、前線と積乱雲の解説なんぞをしてくれちゃったりする。

 これだ。わたくしは正しい女子らしく、メルヘンチックな好奇心や想像力を持って産まれたのに、後天的に規格外の女子になったに違いない。うんうん、きっとそうに違いない。タイミング良く姉から電話があったので、「ねぇねぇ、碍子って知ってる?」と聞いてみたら、「がいしって、あの電柱とか鉄塔にくっ付いてる絶縁体のこと?」と即答しおった。ほれ、みろ。幼少のみぎりは一緒にトランスのことを「ゴミ箱」だと思っていた姉まで、この調子なのである。ふはははは、と勝ち誇ったように勢いづくと、「でもうちの親って車やバイクって、からっきしダメぢゃん」と返り討ちにあった。むぅ。そ、そりわきっと、親の干渉が飛んで来ないものに惹かれたんだよ、うんうん。

 気配を察した母親から、「あんた、プラグの周りについている白い瀬戸物の部分は知ってるでしょ?」と、知らないとは言わせないぞ攻撃。「プラグの周りの白いやつって、インスレーターのこと?」「なんで英語で言うと分かるのよ」「う〜ん、そりわ私が外人だからぢゃないでしょか。ほほほ・・・あっ。インスレーターって絶縁体のこと???」「・・・・・・・・・・」毎度モノ分かりの悪い娘ですまんの。あのね、仕組みにはとっても惹かれるんだけど、単語を覚えるのがダメなのよ。ほら、理系家族で1人だけ頭の構造がゲージツ系だしぃ。

 そこまで言っても親というものは娘は自分と同じ要素があると思いたいのか、分野は違っても基本的な考え方は理攻めで通ってくれるハズと思いたいのか、「そーいえばあんたを毎週病院へ連れて行かなくちゃならなかった頃に、もうすでにバスの運転手がゴリゴリやってるのはなんだ?って、やたらに興味を示していたわね」とさらに追い討ち。そりわたぶん、大好きな図工を1時間早退しなくちゃならないから、ふてくされてバスに乗っていたんだけど、退屈だからなぜなぜ星人してたんだよぅ・・・と応戦したが、説得力ゼロ。小学校2年生の子供放し飼いを相手に、ミッションの仕組みを説明してしまう母親もスゴイと思うけど、規格外の素質は先天的なものであるという結論に、返す言葉がないのであった。

 きっと頭の出来はソラ恐ろしく違うけど、カエルの子はカエルなんだろね。「すまんね、女子離れしてるのは遺伝かもしれない」と脅したところで、父親までが嬉しそうに目を細めている始末である。そ〜いえばこの人が選んだ妻なのだから、素質が似ていたところでなんの不都合もないわけだ。かくして規格外の女子を作り上げたことに何の違和感も示さない両親であったが、とってもよく「今迄に会ったことがないタイプだ」と言われるのは、どう思っているのだろう。


▲MENU ▼BACK



倶楽部冗談

とうがらし@倶楽部冗談






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送