1-10-2003(Fri.)

潜入モノの極意

 手ぬるい、まったくもって手ぬるいざんす。年末年始は「面白い番組を流したら島流し」とゆー掟でもあるかのような地上波放送に、ほのかな憤りをお感じになったみなさま。マンネリ界の王道を突っ走る「紅白」と「かくし芸大会」以外で、最も閉口した番組と言えば何でしたか?

 わたくしは「潜入24時間」とか「密着〜」「衝撃の〜ルポ」の類が、最も腹立たしく最も「またかよ」度の強かった番組でございました。以前に相原コージさんかなんかのマンガで、南極越冬隊員の最も理不尽な任務は、大晦日に「今年も白組が優勝だぁ」とゆー中継をやらされることではないか?というネタがありましたが、ありわ選ばれた人々しか渡れない極限の地で、本来の目的とは全く関係ない国民的行事に、断わり切れずにお付き合いさせられる日本人的理不尽さが滑稽でこそあれ、見る者に殺意までは抱かせないものです。

 むしろ大いなるマンネリズムに安堵して、「日本人は全員こたつにみかんで年を越す」と錯覚している善良なる小市民のみなさまに、今年もまた平々凡々に暮れては明けゆく年の移り変わりにあって、彼の地で崇高な任務を遂行する強靱な精神を持ち合わせた英雄達へ、尊敬の念を思い起こさせる良い機会にもなっていると思うのです。あんなことでもなければ、小学校の社会科の授業で見せられた「しらせ」のフィルム以外で、「あぁ、今日もブリザードが厳しかろう」なんて思い起こすのは隊員のご家族か、フィルター式循環湯沸かし器を提供したメーカーの開発部員くらいではないでしょか。

 一方、マンネリズム界の西の横綱、「かくし芸大会」はとゆーと。こりも年々「かくし芸」とゆーより「無理仕込み大会」と化してはいますが、見て心が荒むとゆーほどのものでもないでしょう。「あれで芸なのか?」なんてボヤく方はいらしたとしても、「かくし芸大会を見ると虫酸が走って、行き場のない怒りに駆られる」なんておっしゃる方は、まぁフツーはいないでしょう。どちらも見たくなければ見なければ良いのだし、かく言うわたくしも、もう数年来見ておりません。

 対する密着暴露モノは、夕方のニュース枠でも大々的に時間を割いていたりするから、始末が悪いのでございます。しかも大仰なお題のわりには希薄な構成もさることながら、内容自体が全く意外でも衝撃でもないのですよ。わたくしとしては花の50代真盛りのおばさま方の大群が、ハート型の蛍光スティックを黄色い声の大合唱と共に、氷川きよしに向けて狂ったように打ち振るっているほうが遥かに「衝撃」だったりするのですが、お正月仕様のデッパ・竹槍ごときで勿体ぶって「衝撃の」とか「潜入」なんて言われると、「宝塚に24年間通ってる水産加工会社主任・田中長吉さん(仮名)56歳」なんてほうが、よっぽど「勇気の潜入」だと思ってしまいます。

 しかも暴走車両に対するコメントが、なおいけません。





そんなに飛ばしたいなら、みんなF1へ行けばいいのに



 な、何をゆっとるんだ、このトーフ頭は・・・。さすがにこれはベテランの男性キャスターが「いや、彼等はF1には行かれないから」とたしなめておりましたが、そんなんでF1パイロットになれちゃったひには、アレックス・ユーンは毎週首都高のC1あたりでポルシェを潰して、とっくにワールド・チャンプになっとるぞ。もしもミハエル・シューマッハが毎晩湾岸線でへら〜りをぶっ潰してて、そりがたまたま通りすがったフラビオ・ブリアトーレの目に留まったから、そっこーでベネトンにスカウトされたとかゆーなら別ですが、そりだけお金があったらトールマンごと買い取って、ブリアトーレさんを雇ったほうが遥かにF1への近道でございます。

しかしながら、そんな道理をご存じない女性キャスターの逆襲は続きます。






なんでサーキットへ行かないんでしょう!



 いや、なんでってあなた。サーキットとゆーのは騒音なんぞも考慮して、人家から離れた山奥とかにそっと存在するものなのです。仮に登場しちゃったとしても、各コースの常連さまが寄ってたかって血祭りに上げるか、行き帰りの道中でも峠のプロが「おらおら、ヘタクソぉ」なんてこづき回しちゃったりして、どっちがゾクだか分かりません。・・・・・・・・・・・・・・・なんてことが言いたかったワケではなくてぇ。




そんなのが来ちゃったら、迷惑だろぉ。

サーキットは産廃置き場ぢゃないんだじょぉ。



 そもそも「潜入」なんてお題をつけといて、「ケーサツに潜入してどーするよ」というお手軽さがいかんのです。それなら「帷子川(かたびらがわ)潜入24時間」のほうが、よっぽど気骨ある企画でございます。わたくし幼少のみぎりは、川と言えば帷子川。毎日通う小学校も、この帷子川の上流にあたる今井川なんてところを越えて、通っておったものです。そして大人は言いました。 「川は汚いから近付いちゃいけません」 さよう、帷子川と申しますのは、鶴見川にその栄光を奪われるまで横浜市内はおろか、日本一汚い河川の名を数年間に渡って欲しいままにした、泣く子も黙る超一級のきちゃなさだったのございます。

 そんな川へ、文字どおり「潜入」してしまう。おそらく職業ダイバーさんでも、あまりの視界の悪さに、そう長時間は潜ってられないことでしょう。でも昼夜兼行、24時間じっと大晦日の夜にタマちゃんの出現を待つのです。どんなに集音マイクに近付くゾッキーな音が入ろうと、ひたすら無視して「タマちゃん、眠ってるんでしょうか」なんて続けて欲しいものでございます。




♪パラリラパラリラ〜、ボワーン、バラバラバラ、ドッカーン
「あ、尻尾のようなものが見えますね」

♪パラリリロリロパラリロリ〜、パフパフパフ
「う〜ん、残念ながらコンビニのビニール袋のようです」

♪パラリラパラリラ〜
「ダイバーの山田さん、そちらいかがでしょう?」

なんたら上等〜っ!

うんたらヨロシク〜ぅ!

「どうも・・・ガリガリシュー・・・このあたりには・・・シューガリガリ・・・昼間いた気配はあるんですが・・・シュー・・・夜は移動してるようですね・・・ガリガリシュー」

かんたら連合、総代見参!

♪パラリラ〜


「ここでいったん、スタジオにお返ししま〜す」
ブツッ



 このくらいは完全無視を決め込んで頂きたい。だいたい神奈川県南東部という土地柄は、わざわざ潜入なんてしなくても、ゾクがそこかしこから勝手にやって来るのでございます。地元から涌いて出たのもちらほら混じりつつ、他県からも夏場とお正月は「キミたち、海のばかやろ〜!でもないくせに、なんで湘南なんだぁぁぁ」とゆーくらい、ザクザク涌いてくるのです。

 わたくしあの「お正月仕様車」ってのを初めて肉眼で見たのは学生時代だと記憶しとりますが、その当時は出所を知らずに「おバカもココまでやればあっぱれだわん」なんて、てっきり自腹でやっとるものかと妙な感心をしたものです。が、だがしかし。ありわ無面と盗難車の巣窟だと知ってから、ひたすら善良な車好き市民のみなさまの敵とみなすようになっておるのです。んなもん見たけりゃ、我が家の最寄りのインターから高速へ乗った途端、アンダーパスの下に日の出待ちの輩がギッシリおるぞぉ。とっとと捕まえんかぃ。

 ありゃ一体、どーやって料金所のゲートをくぐるのだ?とゆー扇型“物干し竿”竹槍や、コンビニにすらぜってー入れない全長1m越えの超ロング出っ歯、なんの意味があるのか全く分からない2mモンの松飾り型スポイラーも、全てココで組み立てられるのでございます。ポイントは、料金ゲートをくぐれないから入った途端にやってるわけで、「んじゃ、ど〜やって出るんだ?」とお思いになったあなた。いいところに気が付きました。





出ないんです。


 ええ、出られませんから。彼等は日の出までの突貫工事を終了すると、いちお海方面なんぞへ南下しはじめます。ご来光を拝むにはちと方角が違うのですが、そりでも丘がちな神奈川のことですから、ところどころビューポイントがございます。運良く1回で日の出タイムを仕留められれば、そこでたむろったりもするのでしょう。ところが所詮よそ者です。地元の日の出時間に疎いばかりか、ビューポイントを探してウロウロいたします。どーやって料金所をちぎってUターンするかはしかと分かりませんが、同じ車が何度も往復したりいたします。こりがただ自宅へ戻るために通過しただけの市民には、年に1度の受難の日なのでございます。

 突貫工事はまったくもって「お正月仕様」で、この1日、いへ数時間さえ持てばいい!とゆー、きわめて怪しげな着け方をしとります。したがって、うっかり後ろについてしまったら、大変なことになるのです。ただでさえ右に左に超トロトロくねくねボワンボワン走っておるのに、そこかしこからガラゴロと降ってくる“物干し竿”の雨あられ。飛び散る火花と舞い上がるスポイラーの落下点に入らぬよう、地元の民はブレーキオイルを抜かれた火曜サスペンスの車さながらに、右往左往するのでございます。

 そんな環境に棲息しているわたくしの感想は、「この番組のディレクターは、よっぽど穏やかな所に住んどるんだろなぁ」でございました。頼む、こんなんわざわざ電波に乗せて、初詣も初日の出ツアーも控えて家でじっとしている人間に見せんでもよろしい。しかもこ〜ゆ〜番組を放映した夜は、必ず外の騒音も増えておるのでございます。だいたいにして、なんで年末年始のぼた〜っと平和を堪能したいときに、「実録犯罪モノ」なのだ? 愉快犯、迷惑犯の常として、この手のものを見せられれば「俺だって」的におサルになるのが世の習わし。中途半端な中継で、そ〜ゆ〜輩を煽っているとしか思えません。





てめーら、正月くらいでそんなにコーフンすんなよぉ


 次回、どーしてもこ〜ゆ〜企画がやりたいなら、降り注ぐ不正パーツの波をかい潜り、その衝撃をルーフに、ボディに受け止めて、真の「潜入」「衝撃」を味わいながら、このくらいは直接その場で言い放って頂きたいものでございます。

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とうがらし@倶楽部冗談






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