9-12-2001(wed.)

Not WE!

 いつからテロリズムは「戦争」に昇格したのだ。

 なんだかなぁ、もぅ。戦争がしたくてしょうがないって感じ。取り憑かれたように「報復、報復」って、いいかげんにして欲しいなぁ。クサ過ぎる「証拠品」の数々もさることながら、首謀者の特定が早すぎたことに疑問をお持ちの方も多いと思うが、じつは今月の9日に米英軍でイラクを空爆していたことをご存知の方は、どれくらいいるだろう。あの惨劇から2日前のことである。かくいう私も友達に聞くまで、イギリス系のニュースサイトにそんな記事が出ていることすら知らなかった。

 最初はヒースロー空港閉鎖のニュースに始まって、じきに「ロンドン上空を通過する不審な飛行機は撃墜の可能性がある」というニュースに変わった。それが「ロンドン上空を通過するいかなる飛行機も撃墜する」という事実上の戒厳令に変わったのは、「ブレア首相とブッシュ大統領は引き続き電話会談中」というニュースを挟んで、わずか1時間足らずの出来事だった。なぜイギリスが?という経緯を辿っていったら、くだんの空爆のニュースに突き当たった。なんだぃ、どこから恨みを買ってるか、事前に知っていたんぢゃん。勝手に資本主義社会全体の問題にすり替えたり、「同盟国」という表現で関係ない人々を巻き込まないで欲しいじょ。

 私自身マンハッタンに住む友人を何人か持ち(しかもよりによってロワーマンッタン)、2晩経っても繋がらない電話と混乱する情報を追い掛けて大層気をもんだが、一連の扇動的な報道とそれに反応する人々の意見には、心底疲れてしまった。まず真っ先に感じたのは、「人間てバイオレンスに餓えてるの?」ってこと。次に感じたのは、「人道的って考えたことあるのか?」ってこと。ただ恐怖と戦慄を感じたと繰り返して動揺を助長する発言と、「敵味方論」の領域を出ていない発言のほうが圧倒的に目立って、怒りと混乱を静めるほうの本当の意味での解決策を提案している意見は、ほとんど見られない。

 湾岸戦争時に自国に駐留したというだけで、あれだけの惨事をしでかしたなら、確かにどうかしている。でも「やられたから、やりかえす」「やられる前にやらなくては」    およそこの世の争いと名の付くもので、これらの正当防衛や報復措置と称する大義名分の付かなかったものなど、あるのだろうか。アメリカ側も議会を重んじる法治国家を自認するなら、せいぜい経済封鎖で兵糧攻めくらいにして「君たち、話し合う気はあるの?」くらい呼びかけたらどーだ。ホントに首謀者が特定できたら、ではあるけどね。もう完全に戦争のための「敵」を決めつけちゃって、コーフンを持続させることに熱中しているとしか思えないぞ。

 洗脳と全体主義は自由主義社会の恐怖であると定義した人々が、全体主義的な総決起を促し、メディアの操作による洗脳活動に走っていることは、どう説明するのだろう。扇動的な会見と衝撃的な映像を繰り返し流すことが、洗脳以外の何であるというのだろう。今年2月の米英軍の空爆を受けて、「鬼畜米英に対して蜂起してください」と促す宣伝ビデオを作ったことと、今回のテロ騒ぎで「全ての資本主義国家への挑戦」と言い切り、「同盟国」の名を借りて強制的に味方の確保を打ち出す会見と、一体どこが違うのだ。「われわれ」という曖昧かつきわめて威圧的な表現は、一体どれだけの人を傷付けたことだろう。戦争というものはメディアの操作と洗脳に始まり、己の都合に合わせた「味方」をどれだけ取り込めるかで、半分は結果が決まったようなものではないか。先手必勝で「酷いことをされた」と宣伝し、自分に有利な意見を持つ人間をどれだけ多く取り込めるか。それこそが暴力に訴えた感情論ではないのか。

 人の目を潰したものは、同等の苦痛を味わって償わなければいけない    有名なコーランの一説「目には目を」は、いつから「報復を奨励する」という解釈になったのだ。「人を傷付ける者は同等の報い受ける、だから人は傷付けてはいけない」という戒めが復讐への賛辞になったのは、ヘブライ語の「ロープ」と「ラクダ」を取り違えて、「ラクダを針穴に通すより難しい」と誤訳した程度の話とはワケが違う。

 戦争だのテロだのというと、平和な日本ではどこか対岸の火事のように思いがちだが、些細な憎しみや摩擦は日常生活のどこにでもある。気に入らなければ泣きわめく、思い通りの結果が出ないとふてくされる、人よりちやほやされていないと機嫌が悪くなる・・・。そうした理性や我慢を知らない子供がそのまま大人になれば、程度の差こそあれ自力で善悪の判断ができずに、感情論で人を傷付けるようになるのは想像に難くない。そんな人間に強大な権力と殺戮兵器を持たせたらどうなるかは、今まさに目の前で展開されている気がする。そして残念ながら、自分の意のままにならないと人を嫉み、自分が優位に立つために邪魔な存在なら感情論で中傷し、精神的にあるいは肉体的に人を傷付ける人間は、特別珍しい存在ではなかったりする。

 引っ込みがつかなくなるまで人を憎み、不都合は全て自分以外の不可抗力によるもの、あるいは他人のせいであると信じたい気持ちは、場当たり的な精神衛生にはなるかもしれない。その結果は何の解決にも進歩にもならないばかりか、いずれ遠くない将来もっと大きくなって自分に跳ね返ってくる。協調性と正義は、必ずしも同じものではない。「みんながやるから」「みんながそう言うから」といった、善悪の判断を放棄した日和見的な考えは、人の心に棲む悪魔を成長させる。報復を支持するとされる、アメリカ国民のあの数字の多さは一体なんだ。暴力に屈するいわれはない。人を傷つける行為なんて、テロでなくても卑劣で残虐なことだ。でも惨事に対して「酷い」と発言して、動揺をあらわにすることが、果たして人道的なことなのだろうか。

 国家という生き物がいるわけではない。毅然とした態度というのは仕返しを決意することではなく、動揺を拡大させないために個人個人がきちんと自覚し、まずどうしたら傷ついた人が救えるかを考えることではないのかな。「善と悪との戦い」などとわざわざ言われるまでもなく、まずは日常生活レベルから、1人1人が自分の中の悪魔をなんとかして欲しい。怒りや憎しみに対して、「酷い」「悲しい」「怖い」と言うことは子供にだってできる。動揺を口にすれば不安な気持ちが伝染し、混乱はより拡大する。怒りに同調すれば憎しみが増大し、短絡的に「敵味方論」だけで判断する感情的な論調を助長する。傷ついた人、悲しんでいる人に必要なものは、一緒に怒ってくれる「味方」ではなく、怒りと混乱の助長を阻止して、いち早く今後の平和を確保する考え方だと思う。



 マンハッタンの友達からメールが来て、やっと無事を確認できた。国際電話は相変わらず不通なのに、インターネットさまさまである。日本では鼻息荒い大統領の演説ばかりクローズアップされていたけど、メールの文面から、ニューヨークのジュリアーノ市長が一番まともな発言をしていると知って、すんごくホッとした。以下、一部を抜粋。

 ニューヨーク市長の発言に”市民の皆様のこの事件に対する憎しみや怒りの気持ちは察する事ができるが、その憎しみの感情がこういった事件を生み出したのだから 〜中略〜 取りあえず憎しみの感情を忘れ、今、助けが必要な人々のために尽くそうではありませんか。”という一節がありました。本当に病院の前には献血をしにきた人の長蛇の列。ふだんは知らん顔の住人同士も安否を気遣いあい、恐慌状態の中でも少しホッとするシーンが見られました。

 軍事攻撃の準備ばかりが強調される中、有事の時に最優先しなくてはならないことを、非常によく理解している人だと感心した。ニューヨーク市民のみなさんは、とても良い市長に恵まれたのですね。


9-14-2001(Fri.)

・・・と、ここまで書いてどうにもアップする気がしないので、2日間放置しておいたのだが、こうもあからさまに情報操作されると、呆れてしまうなぁ。UK YAHOOとBBCに出ていた、9日の空爆に至るまでのフルストーリーが消えてるじょ。

 国連のサイトがハッカーから攻撃されているというニュースもあったので、アクセスが集中しそうなサイトへのリンクも遠慮してたとゆーのに、空爆関連のニュースだけ消えるのはハッカーの仕業ではないよね。犠牲者のご遺族が知る前に消したのかな。自分自身も事の経緯を追って憔悴しきっていたから怒り新たではあったのだが、まずは犠牲者のご冥福を心からお祈りして、武力で人を押さえつけることがどういう圧力を生むのか、怒りにまかせて人に憎しみの矛先を向けるとどういうことになるか、アメリカの報道だけ見ていて報復を支持する人も、考え直してくれると良いのですが。

 ちなみに今日(14日)の時点では、UK YAHOOのヘッドラインだけは残っているけど、詳細はすでにデッドリンクになってまふ。こりも消えちゃうかもしれないから、ヘッドラインのサマリーだけコピペしちゃったものね。

Allied jets attack southern Iraq (Reuters)
WASHINGTON (Reuters) - U.S. and British warplanes have
attacked three surface-to-air missile sites in Iraq's southern
"no-fly" zone as part of a campaign to disable Baghdad's air
defences, the Pentagon said.
- Sep 10 1:55 AM GMT
【9日のイラク空爆の記事】

 ↑これも「残っていれば」だけど、お話の概要は「米英軍は9日、国連の決議とは無関係にイラク南部の農場を空爆したことが、米国防総省発表のワシントン発ロイターの外電で明らかになった」というもの。民間人の死者は11名で、ケガ人は確認されただけで3名ほど。モスクワ発タス通信の外電も似たような内容。彼らは8月27日だか28日だかにも勝手に空爆をしているのだが、どちらも理由がスゴイ。米英軍の偵察機は、イラク南部の「飛行禁止区域」をイラク側の警告を無視して毎日「視察」して、2月の空爆以降だいぶ弱ってたハズのイラクの防衛能力が、かなり息を吹き返しているかもという兆候を発見した。その根拠は、「どうも最近、飛行禁止区域に入ると小うるさく警告を発してくるが、我々は時と場所を選ばずに彼らの防空力を壊滅させる権利があると宣言したのだから、今のうちに破壊しておくのだ」ってことらしい。あのな。

 湾岸戦争のときも「イラクは地球を滅亡させるくらいの強大な軍事力を持っていて、核兵器や細菌兵器を使って我々人類を破滅させる気なのだぁ」と言い張ってガシガシ空爆しちゃったら、じつわおんぼろミサイルと張りぼての戦車しか発見出来なくなかったっけ? 同じ論理で相手が自分の国にやり返してきたら、お互いに「あっちが先に手を出した」と罵りあうのかな。げっそり。

 この空爆の直前に、アフガニスタンで反タリバン勢力の指導者が暗殺されたらしいとか、前日にイスラエルで自爆テロがあったのは8月末の空爆への仕返しだとか、どっちが何に報復してるのかも、すでによく分からないんだけどね。やけに戦闘態勢が完了するのが早かったにゃぁ・・・ってのも、これだけ伏線があれば納得したりする。田中外務大臣がアメリカ訪問の際の「尋常でないSPの数」とゆー話をしていたけど、もう先月の末に戦闘態勢に入ってるんだものね。あとは世論を煽って、大手を振り振り一気に戦争に持ち込めばいっちょ上がり!的なやり方が、どうにも気に入らないにゃぁ。テロはイヤですよ、もちろん。ただ、きっかけがあったわけね・・・てのがどうにもやり切れないのですよ。

 ニュースに関して言えば、イギリス系のニュースのほうがアメリカ発の情報より若干冷静だったものの、当初「US attack」と報道されていた一連の事件が、あるときを境に「war」という表現に変わったのよね。もちろんブッシュJr.の「It's war」という発言を受けてのこと。この頃から報道がどんどん過熱して、戦争めがけてイケイケどんどんな風潮が加速するのよね。あ〜あ、イギリスまで「全英のイスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒もアメリカに同調」などと書いておる。えらいぞ、仏教徒。あ、そりからラマ教徒とヒンズー教徒と、え〜と、え〜と、その他大勢の戦争に加担すると表明しなかった全てのみなさま。ご立派でございます。

 アメリカ経由の情報がどれだけ操作されているかは、中東諸国のニュースやヨーロッパのニュースを見ればすぐ分かる。中東やヨーロッパの情報が正しいかというと、これまた自国の論理で展開された「それぞれの正義」でしかないんだけどね。ただ、片一方の「正義」にだけに加担して、片方を「悪」と短絡的に決めつける恐れは大分減るかもしれない。日本語版の短いニュースは、アメリカの事件後にやっとアップされたので、ご参考までに。こりも消えるかもしれないので、ご覧になりたい方はお早目にどじょ。ただし出元は同じことになってるけど、英語では「air defences」となっていたものが「継続的な攻撃」になっていたり、10日未明付けでイギリスのサイトに出ていたものより、かなり真偽を曖昧にした表現になってます。

【米英軍のイラク空爆関係記事】

 歴史ってのは常に勝者が都合よく書き換えるものだし、今見ているものだって操作されちゃっているのだから、限られた情報源しかない庶民には、何が正しいかなんて判断出来ないよね。庶民にできるささやかな抵抗は、扇動的な宣伝行為に乗らないことくらいでしょか。ただハッキリ言えるのは、「すんげ、迷惑」ってこと。え〜かげん戦争で景気を回復させようって発想は、やめて欲しいのよね。庶民は心穏やかに暮らしたいだけなんだぃ。

 勝手に神の御名において「聖戦」にしちゃうところもスゴイけど、だいたいさぁ、神様を何種類も作っちゃうからケンカになるわけで、ど〜しても「うちの神様のが偉いんだぃ」と言いたいなら、砂漠のデスマッチ1本勝負で「神様直接対決」でもしたらどーだ。ルールはアルハリ砂漠とモハベ砂漠で、アウェイとホームで1回戦ずつ、素手で油田でも掘っててくれ。1回で勝負が付かなかったら、お互いの寿命が尽きるまで掘りっこしてれば、今回みたいな原油の高沸も防げるぞ。万が一初戦で両者ともに油田を掘り当てちゃったら、どっちの原油のが質が良いか、お得意の自動車産業界の支持基盤でも使って、テストすりゃい〜ぢゃん。儲かったら、浮いたお金で今拒否している全米の排ガス規制なんかも援助してくれちゃうと、とってもうれぴい。あで・・・そーいえばモハベ砂漠って、テキサス州ではないわ。おい、テキサスって砂漠すらないのかっ。←意味不明な八つ当たり


 と、いきなりの当たり散らしと、どん暗いお話の数々ですまんの。人によってはやけにアメリカに厳しい書き方に見えるかもしれないね。しつこく言うけど、どっちの肩を持つ気もないのだよ。ただまことに私的な視野の狭い見解で申し訳ないけど、やっぱり庶民は国家の体面よりも、そこに暮らす友人・知人を心配してしまうんだな。ご家族が住んでいる方々は、もっとだと思う。幸い私はアメリカ在住の友人達とは連絡が取れたけど、まだご家族や友人が見つからない方々は、この数日間のイライラがまだず〜っと続くのだと思ったら、当たり散らしたくもなるってもんだ。

 少なくとも私は、とても報復になんて賛成できない。報復を支持する人は、自分の家族や子供、友人・知人の生活が脅かされることになっても、まだ「やっつけろ」と言えるかな。


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とうがらし@倶楽部冗談






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