9-24-2003(Wed.)

TIGERS

 ここ2週間ほどで、ウワサに漏れ聞く「六甲おろし」の出だしが耳に焼きつきましたが、巷ではTIGERS訴訟なんてのが勃発していたらしい。お話の概要は「TIGERS」って商標を使っても良いかどうかで、球団とタイガー魔法瓶が揉めていたようで、数年前にいったんは商標登録の認可が降りたものを球団側の意向を受けて、特許庁が認可取消の通告をしたことが揉め事の発端のようです。先の「阪神優勝」の商標騒ぎといい、そのための商標登録のハズなのに、特許庁は一体何を考えとるんでしょね。

 わたくし版権商売上がりなものですから、ときどき商標や版権のお話を聞かれますが、こ〜ゆ〜どんでん返しはあまり聞いたことがありません。ついでとゆってはなんですが、webの知り合いによく聞かれるのが著作権のお話なので、その辺もちゃんとご説明しておきましょう。


【Copyright】
 まずコピーライト表示ですが、こりって日本国内では殆ど意味がありまへん。著作物を保護する国際法は大きく分けて2通りありまして、日本は「無法式主義」といって© 表示がなくても、全ての著作物は国内での著作権が保護されとります。このばやいの「著作権」とゆ〜のは、絵画や文章、写真その他のオリジナルと複製を作成した瞬間から派生して、原則として作者に帰属します。

 コピーライト自体は18世紀イギリスで生まれたもので、印刷業界の発展と複製文化の幕開けに伴って、世界中に広まったものです。19世紀に入ってヨーロッパ諸国を中心に、「ベルヌ条約」とゆ〜「著作権の享有にはいかなる表記も不要である=無法式主義」という条約が交わされて、日本も明治32年には加盟国になりました。しかも近年は大半の国が「無法式主義」を採用しているので、© 表記は言ってみれば「御用達」と同様、過去にそ〜ゆ〜習慣はあったけど、あまり意味を持たないものになりました。

【Copyrightが必要な国】
 んでわ、ど〜ゆ〜国でコピーライトが必要かと言いますと、「万国著作権条約に加入している方式主義を採っている国」に限り、法的効力が発揮されます。なんだか分かったよ〜な分からないよ〜な説明ですが、「万国著作権条約」とゆ〜のは今から50年ほど前に出来た条約で、「方式主義=著作権の帰属先を明記したもののみ法的保護を受ける」を原則とした著作権保護の決まりごとです。ベルヌ条約と両方に加盟している国では「無法式主義」が優先されますので、コピーライトは「© 表記がないと著作権の保護は出来ませんよん」とゆ〜国でのみ、意味を持つマークなんです。

 コピーライト表示とゆ〜のは、またちとややこしいお話で、必ずしも作者のモノとは限りません。作者以外の人が版権を所有している場合、著作権の帰属先が団体である場合にも使われます。よってコピーライトを「著作権」と訳してしまうと、ちと語弊があります。オリジナルのコミックは作者に権利があって、2次加工物(たとえばキャラクター製品とか)は製造会社が管理している場合、製造元は「版権」を持っているだけで「絵柄の著作権」は持っていませんから、作者に無断で絵柄を作成したり原画を加工することは出来ません。アメリカもんにこうした© 表記がひじょーに多いのは、ライセンス・ビジネス花盛りのお国柄なので、作者と管理会社が別々な「方式主義」のほ〜が都合が良いのです。ゆえにアメリカは、わりと最近までベルヌ条約に加入していませんでした。

 日本でも© 表記が目立ちはじめたのは、一大市場である北米大陸のマーケットを意識してのことで、国内で効力を発揮するものではないんです。日本で製造されたアメリカのライセンスものには© 表記が義務づけられるものが多いですが、こりわ本国へ逆輸入したときに著作権を保護するためのもので、日本国内での法的根拠は何もありまへん。というのも著作権が侵害された場合は、作者が国籍を置く国で取り締まるのではなく、被害が発生した国の法律に委ねるものなんです。知的所有権おかまいナシに違法コピーしちゃう地域では、コピーライトを入れたところで© ごと複写されてしまったり、利権の侵害を訴えたところで「万国著作権条約」にすら加入していない国だったりすると、なんら法的保護が受けられなかったりするんです。

【正しいCopyrightの入れ方】
 じゃぁコピーライトは全く用をなさないのかとゆ〜と、日本国外に輸出するもの、あるいは無断で海外に持ち出される可能性の高いものについて、法的手段に訴える証拠にはなります。ただしこりも厳密に言うと登録が必要で、日本での管轄は文化庁、万国著作権条約はユネスコが管理しとりまして、どちらも素人が洒落で登録できる値段と手間ヒマではないですが、商行為に無断流用されたくないものに© 表記を入れるのは、ある程度の抑止にはなると思います。

 万国著作権条約で定める正式な© 表記は、以下の2通りです。

Copyright© 西暦の年号+名前+All rights reserved.

© 西暦の年号+名前

 アルファベットは大文字でも小文字でも構いませんが、必要なのは「© 」と「最初の発行年」と「著作権者名または版権元団体名」の3つで、書式が不完全ですと法的効力は発生しまへん。また、webに限って「© 」は(C)で代用しても良いことになってます。

 もう1つ、© を入れる場合の注意点は、「何に対して著作権を主張しているか」とゆ〜ことです。こりも正しい表記の仕方がありまして、一般的に「著作物1つに対して© 1つ」になります。何をもって「1つ」と数えるかは版権業務でよく揉めるところですが、たとえばフタと本体が離れ離れになってしまうもので、それぞれに権利を主張したい著作物がついているものは、フタと本体に別々に© を着けるのが正式な方法になります。書籍など、何箇所もロイヤリティの派生する絵が登場する場合は、奥付か装幀まわりにまとめで1箇所入れるのが一般的です。

 webサイトではどうかと言いますと、トップページ1箇所に© 表示を入れれば、中の画像や文章も全て保護されると思ったら大間違いで、やるなら勝手に取られたくない画像やページ全部に© を入れるしかありまへん。通信社のページをご覧になって頂くとお分かりになるかと思いますが、写真1枚1枚に全部© を焼き込んであったりします。こりわタイムやニューズウィークのような報道雑誌でも見掛けますが、写真は通信社が版権を持っている場合と、カメラマンに帰属している場合があるので、2次利用したい場合に問い合わせ先の目安にもなります。


【扱いの難しい権利】
 いくら作者に著作権があるといっても、扱いの難しいものもあります。一番分かりやすいのが人物写真で、こりわ被写体の有名・無名にかかわらず、全ての人の顔には「肖像権」てもんがあります。写真の著作権はシャッターを押した瞬間に発生しますが、個人が特定できる写真を無断でwebなどに掲載して、画面に映っている人から「公開の停止」を求められたら、即座に応じなければいけません。

 ぜってー辞めたほうが良いのは、webでの音楽モノの再配付。日本ではJASRACが目を光らせておりますが、こりわオリジナルのイメージが悪くなったかどうか、知らずにやっていたかどうかはあまり関係ないみたいなので、営利行為であってもなくても無断で公開するのはマズイです。どうしても使いたい場合は大した値段ではないので、素直に著作権料を支払ったほうが良いと思います。替え歌やパロディが承諾してもらえる保証はないですが、無許可でお叱りを受けるよりは心証が良くなりますしね。要は「勝手に使うなよぅ」ってことなので、相手が嫌がることはしないのが気持ち良く暮らしてゆく術でもあるんですよね。

 著作権や版権については写真や音楽モノに限らず、かなり間違った認識がまかり通っているなぁと感じますけど、全部説明するとそれだけでページが1mくらいになってしまうので、後はご自分で調べてみるのも良いですね。 ←他力本願寺@住職本領発揮


【登録商標】
 お話ついでに、もう1つ。 についてもちょっと前にお問い合わせがあったので、ご説明しておきますね。(R)マークは通称「レジスター・マーク」、正式名称を「Registration Symbol」と言いまして、管轄は「米国特許商標庁」とゆ〜お役所になります。(R)マークそのものには日本国内での法的効力はありませんが、商標権とゆ〜のは国ごとに取得するものなので、アメリカで商標登録されているものは、日本に輸入される際に登録されている場合が殆どです。また米国連邦法では「登録済み」とゆ〜れっきとしたお印なので、米国での商標登録がないものに勝手に(R)マークを付けると、連邦法で刑事罰の対称になります。

 商標関係でよく話題になるのは「どっちが先か?」という問題で、日本で登録されたものには「登録商標 第00000号」とゆ〜番号が与えられますので、特許庁でカンタンに調べることが出来ます。基本的に商標や商号は「取ったモン勝ち」の世界なのですが、例外的に商標登録できない文字列もあります。有名なものでは「はちみつレモン」や「チーズ蒸しパン」などがありまして、ありわ「品質、原材料名、用途などをフツーに表現した普通名称」という扱いなので、どこのメーカーが同名の商品を売り出しても良いことになってます。

 なので後発の商品に自社の製品名と酷似したもの、あるいはまんまの製品名を先に商標登録されてしまった場合、全てが泣き寝入りかとゆ〜とそうでもなく、たとえば耳新しい健康補助食品が「〜顆粒」のように原材料名まんまの商品名であったら、原材料が「普通名称」であるかどうかで登録商標の差し止めを請求することも出来ます。このばやいは、いくら「うちのが先だもんね」とゆっても法的権利は先に登録したほうにありますから、争点は「どちらが先か」ではなく「商標の無効」を訴えて、同名の製品を販売し続けても訴えられない権利を確保することになります。類似品が出回って市場が混乱する恐れアリとみなされると、どちらも登録できないな〜んてこともあるようで、「元祖」「本家」「始祖」みたいな戦いになったりするようです。



 さてさて、お話がすっかり長くなりました。先の「TIGERS」訴訟では球団認知のもとに数年間に渡り商標を使用していた経緯もあって、この度両社に「和解勧告」が出されたようです。同じ名称を共有している例では、F1文具でおなじみの三菱鉛筆と岩崎財閥の三菱グループがありますが、全く縁もゆかりもない別会社なのにどちらかが社名変更を申し立てるワケでもなく、お互いにそれぞれの地位を脅かさずに市民権を得て、上手くやってますよね。なので「TIGERS」も仲良くやればい〜のになぁと思ってしまいます。わたくしとしてはタイガースといへばジュリーなので、「勝手にしやがれ」だったりはするんですけどね。


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とうがらし@倶楽部冗談






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