5-28-2001(Mon.)

KISS! KISS! KISS!・・・後編

だいぶ間が開いてしまいましたが、唐突にKISSのお話の後編です。

ときは流れて、2001年の3月13日のことでございます。行ってきましたよ、KISS最後のライブ。

 チケットを取って頂いた友達とは、現地で待ち合せ。昼間の打ち合わせが早目に終わったので、現地にもわりと早目に着いていたのですが、なんせコスプレの殿堂「KISS公演」です。もちろん手始めに、オーディエンス・ウォッチングなのでした。丸ノ内線で水道橋入りした私は、ドームの裏側から地上へ出てきたことになるのですが、まずは正面入り口を目指してぐるっと半周。

 予想どおり、黄色いビルの前やらドームホテル(こんなん出来たのね)の手前には、なんちゃってKISSが何組かおりました。彼らのキャリアを考えたら、ファンもと〜ぜん年齢層がスライド式に上がっているのですねぇ。お子さん連れのお母様も沢山いて、子連れの方にありがちな必殺「子供コスプレ」な方々も数組おります。ココで気後れしてはいかんですな、お母さん。カワイイんだけど、親子でやっていただけたら、もっとうれぴい。

 初来日のときとの一番の違いは、エースのコスプレがわんさかいることでしょか。中には「女子3人組のエース」もいたりして、4人1組でキッチリ「なんちゃってKISS」になっておられる方々が少ないのも、初来日のときとはちと違う。ちなみに武道館のときは、ジーンとポールのコスプレが圧倒的に多くて、しかも洋楽のプロモーション・ビデオもあまり浸透していない時代です。ステージ衣装やメーキャップ道具も素人には手に入りにくい時代だったので、数少ないロック雑誌の写真から、涙ぐましい努力をして「それっぽいモノ」の寄せ集めで、コスプレの晴れ舞台へお出ましになったファンが殆どでした。

 それがまぁ、なんたる変わりよう。ファンも中・高生中心の世代から、小金持ちな独身貴族に成長しているので、まずコスプレの完成度の高さにビックリしました。25〜6年あればえ〜かげん資料も揃うというもので、360度完コピしているコスプレなんて当たり前。ど〜ゆ〜コトかというと、初来日のときはあまりにも資料がなくて、真横とか背中とかが今一コピーしきれていない、「いかにも手作り」ちうコスプレばっかだったのですよ。お顔なんてあーた。どう見ても水性ペイントかお絵描きクレヨンで塗ったでしょ?という、それがまた別の意味で「すっげ根性!!!」と感嘆せずにはいられないものでしたが、今回は「マジックで描いちゃったものね」というメイクもおらず。あぁ、みなさま成長したわねぇ。

 中でも断トツに素晴らしかったのが、外人3人組のKISS軍団でありました。オリジナル・メンバー中、今回「契約の都合で」急きょ来日がキャンセルになったピーターだけちゃんといないのも、小技が利いてて泣かせます。この見事なコスプレちゃんは、中へ入ったらなんと偶然同じブロックで、じっくり観察させていただきました。彼らは黄金期のKISSを寸分たがわず完コピしていて、バージョンはコスプレ第2段の「デストロイヤー」発売当時のものですね。中でもエースとジーンはひときわ見事で、周囲のお客さんからも惜しみない拍手が送られておりました。う〜ん、いいもの見させて頂きました。途中、トイレかなんかに立ったジーンが戻ってこられなくなって、エースが回収しにいったのも笑ったけどね。


 さて、前座が付かないKISS公演。オープニングは、もちろん「デトロイト・ロックシティ」でございます。左右に2体ずつ並んだエアー・ドールの真ん中に、緞帳のようなロゴ入りの幕。その裏側からボカーンとマグネシウムが6連で爆発すると、いきなりイントロが始まって、幕が落ちたところにはもうメンバーがいるのでした。あぁ、この唐突な始まり方。初来日のときと一緒だわぁ。4半世紀ぶりにご対面した彼らの印象は、まず「すんげ機材!」というものでありました。もうえ〜かげん働かなくても良いほど稼ぎ倒した人々なので、もちろん機材もすんごくなってて当たり前なんだけど、なんとなくあのKISSが世界のビックネーム入りしているのが、実感として信じられなかったのに、あの機材の山を見たら一気に信じられたというところでしょうか。さすがにこのアンプには、ギターは突っ込まないだろなぁ・・・そんな印象で始まったKISS最後の公演。

 記憶が確かだとしたら、この後の展開は初来日とほぼ一緒。違っていたのは、オープニングでフロントの3人が5段積みアンプの上から飛び降りなかったことくらいかな。つまり「デトロイト・ロックシティ」で始まって、「I want you」「Colling Dr. Love」、5〜6曲目で「Fire House」の火吹きショーがあって、7〜8曲目で「God of Thunder」の血糊ショーがきて、ほとんどMCを入れずに息つく間もなく15〜6曲やるんです。で、すこ〜しMCがあって、バラードを1〜2曲。大トリは「Rock'n'Roll All Nite」でシメ。あれ?ほとんどソラで歌えるじょ・・・。それが今回の公演の感想でもありました。日本贔屓な彼らのこと、何がウケるかのリサーチはバッチリだったのでしょうね。素顔に戻ったころの曲やら、ヘビメタ指向に走っていたころのハードな曲は皆無で、まんま「あの頃のKISS」が見られたのは、「あぁ、もうこの先はないのだな」と思わせる反面、懐古趣味たっぷりでお出掛けした私にとっては、桜の季節にタマネギの下で見た、あの「世にも奇怪なロック集団」を存分に思い起こさせてくれました。

 外タレの「I Love Japan」は信用してはいかんというのが定説ですが、彼らはホントに日本をよく研究しています。カタコトの日本語サービスはもちろんのこと、ベラベラと英語のMCを入れても、「イエ〜イ」しか返ってこないものよく知ってます。なので、MCは音が回りまくって、何を言ってるのか半分くらいしか聞き取れなかったけど、たぶん全部聞いても同じだと思う(おい)。だって、「今まで福岡、京都、大阪、名古屋、札幌、色々回ったけど、やっぱトーキョーがサイコー!」とか、その程度の話しかしてないんだもの。おかげでこの日のお客さんは、英語が聞き取れなくて妙なリアクションをしたがために悲しい思いをしたとか、ベラベラとまくしたてられて「ちっ、ど〜せ通じてね〜や」などと見下された気分も味わうことなく、気持ち良く家路に着けたことでせう。


 肝心の演奏は、「上手くなったわぁ」の一言に尽きます。ビックネームと呼ばれる中でも、「テクなし、目立ち度命」と言われたあのKISSが(ごめんなたいごめんなたい)、さすがに30年やってれば、いい音出すようになるんですねぇ。もちろん初来日のときより、格段に機材が良くなったということもありますが。あぁそしてエース、あなたは変わらないのねぇ。相変わらず歌もMCもヘタなんだけど、ボーカルをとるとマイクスタンドの前に棒立ちになってしまうのが、まるで初めて人前で演奏する中学生のようで、なんかカワイイ。ゼンマイ仕掛けで動いているかのような、ぎこちない動きとクネクネ・ギターは変わってなかったです。あの宇宙を飛び去るロケット・レスポールのCGが許される「ビックネーム」ってのも、おそらくエースが最初で最後でしょう。頼むよぅ、わはははは。

 でもね、すでに御歳50を越えるおっさん達が、お腹も出てなきゃ、相変わらず大真面目にコスプレ・ショーをしているのは、見上げたプロ根性だわ。お顔を厚塗りしているせいもあってか、同じだけ歳を重ねたはずのオーディエンスと彼らを比べたら、まるで人様の半分の速度でしか歳をとらないのではないか?と錯覚させるほど。声も昔のまんまだし、年齢を感じさせたのは「飛んだり跳ねたり」が減ったことくらいかなぁ。当日はちとKISS公演には似付かわしくない、仕事帰りのカッコではありましたが、お約束のアンコール「Rock'n'Roll All Nite」まで、どっぷりタイムスリップしたまま、KISSサウンドを堪能できました。これまたお約束の、3人横並びのダンシング・フラワー状態なパフォーマンスなんて、あ〜た。もぅ鳥肌モノ。頭の中は一気に中学生の頃、夕方放送されていた洋楽ベストテンへとぐるぐるしちゃったのでありました。

 またあの頃憶えた歌って、いつまでも歌えるものなのね。KISSのすごいところは、初来日後にNHKのプロデューサーも語っていたけど、毎日寸分たがわぬ演奏が出来ることなんですよね。つまりくだんのプロデューサー氏いわく、放映用のビデオを編集していてどうしてもアングルが気に入らないので、スペアで押さえた次の日の公演を切り貼りしたら、リミックスしないで音も動きもつながるという逸話があるのです。よってライブもレコードと同じように演奏したりするので、一緒にわ〜きゃ〜歌ってもそれほど違和感もないし、レコードと違ってるのは音の悪さくらいでしょか。サラッとやってるように見えて、じつわおびただしい数のリハーサルをやったであろう彼らのステージングは、1時間50分間、キッチリ飽きることなく魅せてくれました。相変わらず、「一度使った仕掛けは同じステージで2度繰り返さない」という「ロックンロールのサーカス」は、今回もしっかり健在でした。

 ちと寂しかったのは、やっぱり「Beth」と「Hard Luck Woman」が抜け落ちていたことですが、ピーターがいない穴は「Black Diamond」が始まるまで、まったく気付かないほどでした。なんせ幕がおりたときは「あれ、ピーターっていつからツーバスにしたんだ?」と思ったものね。唯一惜しいと思った点は、エリックさんだけ30cmの超厚底ブーツを履いてなかったことでしょか。そんなドラムの助っ人エリック・ジンガーさんは、もちろん大メジャーになってからのオーディションで決まった人なので、ピーターと声質も似ているし雰囲気をじつによくコピーしています。上手いドラムを叩くのに、ピーターのトコトコ・ドラムの特徴をよく掴んでいるし、メイクまでピーターとドソックリなのね。もしかしたら、この会場の中で一番のピーター・ファンは、エリックあなたでしょう?と思わせるほどの完コピぶりは、見るものを感動させたけどね。でもでも、あなたの人生、それでいいのかエリック・ジンガー。


 そんなこんなであっという間の2時間弱は、存分にKISSワールドを堪能させてくれるものでした。もっと見ていたかったけど、これで最後だからよけい感動したのかな。ポールが繰り返し言っていた、「何度も成功する自分を思い描いてすごした」その頃、今が予想できたかな。日本へ来る直前に彼らが思い描いていた、理想通りの幕引きになったんでしょか。ただでさえ大人しい日本人なのに、一緒に歳を重ねてしまったオーディエンスは、もしかしたら彼らの予想より熱狂ぶりが足りなかったかもしれないけど、きっと見に来た人は一様に満足してくれたと思います。長い間、お疲れさまでした。気が変わってまたやりたくなってもいいけど、そのときはもっとスケールの大きなことをやらなきゃ許さんじょ。そんな言葉を贈りたい、KISS最後の公演でした。最後に、チケットを手配してくれたサカイさん、本当にありがとうございました。


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